オートショックAED 使用事例の検証結果の中間報告について
令和6年4月17日
日本救急医療財団
⾮医療従事者によるAED使⽤のあり⽅特別委員会
委員長 坂本 哲也 殿
AEDの内部データ利用・検証に関する作業部会
部会長 田邉 晴山
オートショックAED 使用事例の検証結果の中間報告について
- オートショック AED は、救助者の操作によらず機器自身によって速やかに電気ショックを行うため、電気ショックが行われるまでの時間を短縮できるなどの利点があるとされています。一方で、従来と異なる仕組みのため、救助者が戸惑い、AED の使用に支障をきたしたり、感電事故が生じたりするのではないかなどの懸念が指摘されていました。
- そのため、日本救急医療財団「⾮医療従事者によるAED使⽤のあり⽅特別委員会」は、オートショック AED 使⽤事例の検証体制の整備について報告書※1をまとめ、公表しました。
※1「オートショック AED 使⽤事例の検証体制の整備について(報告書)」(令和3年12⽉28⽇、日本救急医療財団「⾮医療従事者によるAED使⽤のあり⽅特別委員会」) - 当作業部会は、本報告書に基づき、令和3年12⽉の登録例より、オートショックAEDの販売後の使用事例の検証を開始いたしました。この度、検証の開始後およそ2年余が経過し、これまでの検証結果を中間報告としてとりまとめましたので、次項のとおり報告いたします。
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オートショックAED使用事例の検証結果について(中間報告)
AEDの内部データ利用・検証に関する作業部会
- 2021年12月より、AED製造販売業者等の協力の下に、オートショックAED使用事例についての情報収集を進め、今般、オートショックAED使用事例173例(うちショック事例12例)について、検証を行った。
- 検証に用いた資料は、AED使用後に実施した使用者アンケート、機器に残された心電図記録、機器に残された使用時の音声情報である。
- 検証の概要は次項の通りであるが、今回検証を行った事例においては、救助者がオートショックAEDの操作に戸惑ったり、感電事故の発生が懸念されるなどの安全性に問題があると考えられる事象は確認されなかった。
- なお、オートショックAEDが使用された傷病者への対応にあたった救急隊の活動について、AEDの取り扱いに関する課題※1が明らかになったため、消防庁に情報提供することとした。
※1 オートショックAEDが自動で電気ショックを実施しようとする直前に、救急隊が自らのAEDに交換したと考えられる事例があった。交換しない場合の方が電気ショックをより早く実施できた可能性がある。傷病者接触時にAEDの作動状況を確認して、機器が電気ショックを必要と判断している場合は、その機器(従来型のAEDも含む)のまま電気ショックを行うことを考慮する必要がある。この点につき救急隊、消防隊への周知を検討頂く必要がある。 - また、電子情報技術産業協会 体外式除細動器WGは、救助者の使用に関する懸念※2から、オートショックAEDの販売・設置先については、当面の間、オートショックAEDの説明・訓練を受けた者によってのみ使用される場所に販売や設置を限定する自主規制を導入することとし、その間に使用事例の検証を行い、一定程度※3安全に使用できることが確認できたのちに規制を解除することとしていた。今回の使用事例の検証では、自主規制の解除に差し障る事象は確認できなかった。
※2 従来型と異なる仕組みのため、救助者が戸惑い AED の使用に支障をきたしたり、感電事故が生じたりするのではないかなどの懸念
※3 オートショックAEDの販売や設置を限定する自主規制を解除するための安全確認に必要な事例数の目安を「オートショックAED使用事例30例程度、かつショック実施事例10例程度」としていた。 - 当作業部会では、少なくとも30例の電気ショック実施事例※4までは引き続き慎重に検証を進める予定である。
※4 オートショックAEDの販売後の検証の目標数を、「オートショックAED使用事例100例程度、かつショック実施事例30例程度」としていた。使用事例については目標数にすでに達しているが、当面の間、引き続き検証を進める予定である。
オートショックAED使用事例の概要
- 使用情報の登録状況
使用事例───173件(2021年12月15日~2024年2月1日)
うちショック事例───12件 - 登録概要
- 機種
2社(日本ストライカー社製、日本光電社製)の計3機種 - 使用場所
介護福祉施設136件、会社・事業所13件、商業施設7件、
医療施設4件、その他不特定多数が利用する民間施設3件、
公共交通機関3件、体育・スポーツ施設2件、宿泊施設2件、
学校・保育施設2件、集合住宅1件 - 使用者
設置施設に所属する者154件、それ以外7件、不明12件 - 使用者の資格
不明89件、医療者以外47件、看護師23件、その他の医療資格者4件、医療資格者(資格不明)4件、救急救命士3件、未記入3件 - 救命講習受講歴
あり79件、なし43件、不明48件、未記入3件 - 感電の有無
電気を感じなかった(傷病者から離れていた)139件、不明31件、未記入3件 - 心電図データ
あり122件、なし51件 - 音声データ
あり11件(ショックあり8件、ショックなし3件)
- 機種
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非医療従事者によるAED使用のあり方特別委員会
検証担当
AEDの内部データ利用・検証に関する作業部会
<委員>
石 見 拓 京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻
予防医療学分野教授
菊 地 研 獨協医科大学病院救命救急センター教授
草 野 正 孝 東京消防庁救急部救急指導課⾧(令和6年3月末まで)
小 菅 宇 之 帝京大学医療技術学部教授
〇田 邉 晴 山 救急救命東京研修所教授
丸川 征四郎 吹田徳洲会病院救急・集中治療部門⾧
〇委員長
<オブサーバー>
加 藤 渚 厚生労働省医政局地域医療計画課主査
坂 本 哲 也 公立昭和病院院長
「非医療従事者によるAED使用のあり方特別委員会」委員長
横 田 裕 行 一般財団法人日本救急医療財団理事長